We are not curious.

I am Curious: Yellow という映画が昔あったが、こっちの学生さんはちっともcuriousでないんだよね。

小脳の重要な機能に運動学習がある。小脳が関与する運動学習とは、feed forwad system を使った運動―あらかじめ決まっている設定値に従って運動コマンドを運動ニューロン(群)に与えて実施する運動―の際の設定値を繰り返し運動を繰り返すことによって適正な値にすることなのだ。

この辺りだろと、テニスラケットを振る、バットを振るなんていう動作がこれに相当する。ボールが飛んできて、そのその軌跡を見て、ラケットやバットを振るなどいう動作をしようとするとき、視覚情報を受け取ってから運動コマンドを作成、複数の筋を収縮させて運動が生ずるのには時間がかかり、ボールの方が速いから間に合わず、通りすぎてから振ってしまうことになる。このような素早い動作が必要なときに有効なシステムで、ともかく運素早く運動させるわけだ。

negative feed back systemは目標の後追いをして動作するような仕組みなので、遅い速度の場合、正確になり有効なのだが、速い運動には適さない(*追記)。

feed forward system では、予め運動コマンド(設定値)があって、その通り運動するわけだから、ボールがバットにあたらない場合がでてくるつまりエラーが生じる。何cmボールとバットがずれていたとかいうわけだ。このズレを検知して、次回の運動コマンド(設定値)を変更する仕組みなのだ。だから運動を繰り返すことによりエラーを小さくし、正確な運動コマンド(設定値)を作り、ボールにバットを当てることができるようになるわけだ。この運動コマンドの設定を変化させる(学習する)のが小脳なのだ。練習すると運動がうまくなることなのだ。小脳に問題があると運動機能障害になるというのは、運動学習ができないので、運動自体は問題ないのだが、その調節がうまくいかないのだ。

と講義しても、うちの学生さんにはなんだからわからない。当然ですね。そこでデモ実験をするわけなのだが、講義室でテニスラケットを振る、ボールを投げるわけにいかない。

プリズム眼鏡というのがある。眼鏡にプリズムを取り付け、網膜に上下反対の像とか左右の角度がずれた像が投影するようにするのだ。寝たママTVを見るとか、斜視の矯正に使う。ガラスのプリズムを手に入れて左右角度をずらすのはちと高価になる。ちとまともな「逆さめがね」なんて10万円もする。フルネルレンズのようにプラスチックの板の表面に一定角度の細かな溝があって光が屈折するというプリズム板・導光があるのを知ってこれとゴーグルで作成してみた。30度ずれるのだ。これだったら安価にできる。300 mm X 300 mm の板で1万円くらいだ。ゴーグルは工作時につかう安全眼鏡とかで数百円だ。あとはビールテープだ。

横長の透明な四角の板がプリズム板で、ゴーグルの向こう側に黒い線が上下に走っているのだが、プリズム板を通したゴーグルの穴に、この線がずれて見えているのがおわかりでしょうか?緑は視界を限定するための遮光のためのビニールテープです。

学生を手をまっすぐ伸ばしたらホワイトボードに届く距離に立たせ、手に青いホワイトボードペンをもたせ、ペンを持った手は胸に置く。ゴーグルはプリズム無しにして、正面にある黒い☓印に素早くペン先を当て直ぐ胸の位置に戻すことを繰り返させる(下の図の青い点)。目標の☓近くに届いた点は集中する。次にゴーグルにプリズム板を取り付け、ターゲットが正面に見えるように頭の位置を調節させ、同じことを赤いペンで動作させると、視野の目標が30度ずれているのに、運動コマンドは体幹の正面にリーチするようになっていたため、目標に到達できない。このエラーを検知して次の運動が修正される、を繰り返すので次第に目標に到達できるようになる(下図の赤い点)。プリズムを取り除き緑のペンで行わせると、プリズム有りの時に設定し直された値で運動するから今度は逆にずれる(下図の緑の点)。

ずれの時間経過の模式図は下のグラフのようになる。

電総研 北澤茂 プリズム適応 参照

デモ実験は予想通りになったのだが、学生さんは興味を示さない。たいていこういうことをやると、講義終了時に眼鏡をかけてみたいというのが出てくるのだが、誰もいない。不思議なのだ。興味をもたせるような講義でないからだな。

こういう空振りが多いんだよね。拙ブログ管理者の学習能力の欠如なんだろうな。

[ 追記 ]2017.10.16

刺激応答時間:単純に網膜にフラッシュや単純な市松模様とかを提示したときの後頭葉(第1次視覚野)に誘発される電位の潜時は100 ms 程度で、光ったらボタンを押すというような操作で刺激応答時間(筋の出力までの時間を含む)を測定すると最も速くても200 ms 程度になる。聴覚のほうが速く100 ms強だ(100m競争のフライング判定基準はここにある。)だから速いボールのスピードにヒトの視覚情報処理はついていけない。投げたボールを打ち返すロボットがあるようで、この場合ボールの軌跡を判定するために 1 ms 間隔で得た画像から処理するらしい。人間の神経系では無理ですな。

「We are not curious.」への2件のフィードバック

  1.  学生に「たたいて・かぶって・ジャンケンポン」をやらせて、スマホ動画で応答速度を計測させる実験とかはどうだろう。

  2. いやいや、真面目な、視覚刺激、聴覚刺激、振動刺激、皮膚の電気刺激の応答潜時の違いを測定する実習もあるんですな。
    これが、本来なら聴覚刺激の応答潜時(ヘッドフォンで音を聞いたボタンを押す)が一番短いのですが、何故か、そうならないんですよね。最も単純な実験なんですけど。

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